佐藤由美子

・・・実際、死ぬときはみんなひとりだ。たとえ側に誰かがいたとしても、私たちはひとりで生まれてきて、ひとりで死んでいく。  とはいえ、孤独を感じる患者さんが多いという現実は確かにある。しかも、家族と一緒に住んでいても、病院や施設でたくさんの人に囲まれていても、だ。これはなぜなのだろうか?  あなたには、こんな経験があるかもしれない。都会の人の群れの中で急にひとりぼっちだと感じたり、パーティーで楽しそうに談笑する人の輪になかなか溶け込めないと感じたりする。周りに人はいるのに、つながりを持つことができない。誰も自分を理解してくれないし、受け入れてくれない。末期の患者さんにも、そのような孤独感を抱く人がたくさんいるのだ。  何も周りの人は患者さんに意地悪でそうしているわけではないし、そうしているという実感さえないだろう。あなただってそのはずだ。では、何が問題なのかと言えば、ただ単に、私たちは死を迎える人の心がわからないのである。患者さんだって自分の気持ちをうまく表現できないことが多いし、なかなか心を開かない人もいる。こうして、患者さんと周囲との関係には、すき間ができていくのだ。  何より、最も大きな原因は、私たちには「死」について教えてくれる人が誰もいなかった、ということだろう。昔は死がもっと身近にあり、病気の人に接することも頻繁にあった。だが、今やたいていの死が病院で起こるので、医療者でも限り、一般の人が死を目のあたりにすることは、一生のうちで数えるほどしかない。ほとんどの病院では、死期が近づいた患者さんは個室へと移される。本人とご家族のためという理由もあるが、むしろこれは、他の患者さんを動揺させないための措置だ。このように日本では、多くの人が死を迎える病院においてさえも、死が遠くに追いやられているのである